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法人化した後の最初の調査は独特のポイントがよく見られる
法人成りした後に、初めて1回目の税務調査が入った場合には、個人事業主から法人化したタイミングの売上と経費の振り分けや棚卸資産の譲渡といったポイントをよく見られます。
個人事業主と法人はあくまでも別人格として税法上は取り扱われます。したがって、法人を作った後になんとなくの基準で「今月分から法人の会計上の売上にしていこう」とか「棚卸資産はそのまま無償で法人に移せば良いよね」とか、そういったことにはならないので要注意です。
税務調査で上記のポイントを指摘されてしまうと、所得税の追徴課税又は法人税の追徴課税が起きたり(罰金等もセットで生じてしまいます)、場合によっては消費税の納税が大きく出てしまったりします。棚卸資産や固定資産の以降に際して、消費税は高額になる可能性があることから、特に要注意ですね。
なお、これは個人的な感覚ですが、一から法人を作るよりも、法人成りをしたケースの方が税務調査が入る確率が若干高い気はします。もちろん、法人成りをした会社の方が最初から利益を多く計上する傾向があるために、税務調査で追徴税額が生じやすいという理由もあるとは思いますが。
法人成り後の調査では独特の調査ポイントに注意することが求められます。
個人事業主から法人に形態を変えた場合には、個人時代の取引先からの売上を法人の売上にどこかのタイミングで変更することになります。
こちらの変更のタイミングが正しいのかどうかは、法人成り後の初めての税務調査でよくチェックされるポイントです。
重要なのは、取引先との契約がいつから法人との契約に変更されているからです。
よく間違いがちなのは、法人設立したその日以降の入金分とか請求分に関しては全て法人の売上にしてしまうパターンです。こうすると会計上は楽なのですが、あくまでも個人事業主として契約したり請求した売上に関しては個人の確定申告で売上高として処理するようにしてください(法人を作ったのだから、設立後は全て法人に売上や経費を計上すると楽という気持ちはわかるのですが)。
一方で、必要経費に関しても同様になります。個人の売上に振り分けたものに係る必要経費については、やはり個人事業としての必要経費とするべきであり、法人の損金にはならないのです。
反対に、法人として顧客と契約した後の売上や経費は法人に帰属するものであり、個人事業の売上や経費として経理しないように注意しましょう。
法人と個人への売上と経費の振り分けに関しては、厳密に、かつ、慎重に行う必要があると言え、最もミスが生じやすいポイントですのでご注意ください。当然、税務署の調査官もここは重要ポイントとしてよくチェックしてきますので。
ちなみに、法人成りのタイミングで会計処理方法がわからなくなってしまい、うっかり個人にも法人にも売上を計上しない部分があったりすると、場合によっては重加算税という恐れも出てくるので、売上を法人成りのタイミングの売上を見落とさないようにしましょう。
仕入を伴う卸売業や小売業の方、製造業の方などの場合には棚卸資産をお持ちだと思います。こういった方々が法人成りした場合には、その棚卸資産を法人に移す必要が出てきます。ここが簡単ではないのは、法人でいきなり期首棚卸資産を計上するのではなく、自分個人から法人が商品等(製品など含む)を買い取る形をとる必要があるのです。
個人側から見ると、法人に棚卸資産を売却することになります。法人成り後の最初の税務調査できちんとした売却の処理が行われていないと、法人の調査から個人の調査に発展してしまい、個人の譲渡収入の計上漏れが指摘されることがあります。仕入れ値等の原価と売却額が同じということになれば、そこは所得が出てこないですが、大きな問題は消費税です。
個人が消費税の課税事業者の場合には、課税売上が計上されるため、消費税の納税義務が出るのです。個人が免税事業者の事業年度に法人に譲渡したのなら消費税は出ないのですが。
注意するパターンとしては以下のようなパターンです。
「12月末日を過ぎてしまって1月の最初に法人を設立する→1月に個人から商品等を譲渡する」
上記のケースで、12月末までは免税事業者だけど、1月からは課税事業者になる場合には、12月に法人成りをして、商品等の棚卸資産を法人に譲渡することで、消費税の納税をしなくて済むのです。棚卸資産の金額が大きい場合には、この1ヶ月の差で消費税額が大幅に変わってしまうことがあるので十分に注意しましょう。
棚卸資産を個人から法人成り後の法人へ譲渡する際の価額に関してですが、帳簿の簿価で譲渡することが最も多いですが、その簿価が通常販売する価額の70%相当額に満たないのであれば、低額譲渡に認定されるおそれがあるので検討が必要です。
上の項目で、法人化した後の最初の税務調査では棚卸資産譲渡による消費税に注意することが必要であることを述べました。
こちらと同様に注意が必要なのは、建物付属設備や工具器具備品などの固定資産です。固定資産に関しても、個人から法人に適正な価額で譲渡する必要がありますので、同様に税務調査での重要チェックポイントになってくるのです。基本的には、未償却残高で個人と法人間で売買すれば問題視はされないでしょう。
ちなみに、法人が減価償却対象となる固定資産を取得した場合の耐用年数は、中古資産を取得した場合の耐用年数を用いることになりますので、この点もご注意ください。計算式は以下の通りです。
(その資産の耐用年数-経過年数)+(経過年数×20%)=中古資産の耐用年数
法人成りは、そこまで難しい手続きではありませんが、会計処理に関して誤りをおかしてしまうと、税務調査によって手痛い追徴課税と罰金、利息の支払いが生じてしまいますので十分にご注意くださればと思います。
初めての税務調査ですと経営者の方としても大変緊張するのではないでしょうか。別に脱税などをしていなくても、税務署が来るというだけで、何か税金を強引に取られるのではないかと心配になってしまうようなこともあるかもしれません。
しかし、そのようなご心配は無用です。税務調査官はあくまでも法律に則って税務処理が行われているのかを確認するのが仕事であり、強引に奪うようなこともしなければ、詐欺師のようなことをするわけでもありません。
緊張して焦ってしまってついつい嘘をついてしまったりするようなこともなく、とにかく冷静に対応することが大切です。又、税務調査の前には一度、税理士と打ち合わせもしておくと良いでしょう。危険なポイント、争点などに関して、顧問税理士から事前に聞いておくことで、安心感が出ますし、税務職員に質問された時の回答の準備をすることもできるでしょう。
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